伊東を掘りおこそう!

歴史

海の神様はアワビがお好き?

遠方からの景色。沿岸にある洞が姥子神社

川奈の海岸に姥子窟と呼ばれる海食洞穴があります。幅約30メートル、奥行き約20メートル、高さ約7メートルという大きなものですが、この洞穴はかなり昔の時代から人間に利用されてきたことが分かっています。2001年(平成13)に行われた伊東市史編さん事業のための調査では、縄文時代に人々が使っていたであろう黒曜石の破片が発掘され、さらに古墳時代前期の土師器が発掘されました。これは高坏といわれる祭祀などに使われる器で、同じ地層からは巨大なアワビの殻が54個、そのほかにもカツオ、ウミガメ、トコブシ、サザエなどのほか、牛の骨も見つかりました。アワビはすべて火で焼かれた形跡がありました。調査の結果から、この海食洞穴は古墳時代には神を祀る場所として使われ、アワビその他の食物は、海の神に捧げた熟餞(調理された供物)だったのだろうと考えられています。

現在、姥子窟の手前には姥子神社があり、これは「豊玉姫命」という海神を主神とする神社でした。川奈で海に関わる仕事をしている海士や漁師は豊漁や安全をこの神社に祈ったといいます。海とともにあった伊東の人々にとって、神聖な場所であったのです。いったい古墳時代にこの海食洞穴でどのような祭祀が行われ、人々は何を祈り、海を眺めたのでしょうか。今も姥子窟の最奥部には姥子神社の社が祀られています。

川奈にある姥子窟の姥子神社 写真:金子浩之氏提供

出土したアワビの殻 写真:金子浩之氏提供

関連記事

PAGE TOP