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コラム

不思議の池・浄の池

小さな池に熱帯の魚が生息、一時は国指定天然記念物に

かつて、市街地の和田にあった浄の池という小さな池は、淡水の池なのに水温が26〜28度あり、珍しい熱帯性の魚もいたという不思議な池でした。江戸時代には存在がすでに知られていたようです。嘉永年間に書かれたとされる『伊東誌』にも、「異魚 または毒魚とも言う。伊東和田村の小池にい魚を産す」と書かれています。生息していた魚は、蛇鰻(じゃうなぎ:オオウナギ)、毒魚(どくぎょ:オキフエダイ)、湯鯉(ゆごい:ユゴイ)、迅奈良(じんなら:コトヒキ)、横縞(よこしま:シマイサキ)の5種といわれています。

浄の池には温泉が湧出していたものと思われますが、海水魚がなぜ池に生息するようになったかは今となっては不明です。明治後期から大正にかけては湯治に訪れた客が大勢見物に訪れ、周囲には茶屋ができるほどの賑わいだったとか。1936年(昭和11)にはこれらの魚を描いた絵葉書も販売されるほどの人気でした。

この池は1922年(大正11)に特有魚類生息地として国指定天然記念物に指定されましたが、後に狩野川台風の影響や温泉湧出が無くなったことで魚類も姿を消したため、1982年(昭和57)に指定解除されています。池は現在の玖須美温泉通りから一本南の道筋にありましたが、現在はビルが建てられています。しかし、室生犀星が大正期に作った「じんなら魚」という詩を刻んだ詩碑はいまも松川沿いに見ることができます。


東海館が発行した伊東温泉御案内にも伊豆・伊東の名所として記載されています
資料提供:伊東温泉観光・文化施設東海館

松川沿いの室生犀星の「じんなら魚」の詩碑

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