伊東を掘りおこそう!

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多面的な伊東の魅力

伊東の魅力は二面性

伊東市の観光事業に関わるようになり4年が経ちました。
自分が仕事で観光に関わること、伊東に関わることになるとはまったく予想もしていませんでしたが、この4年間の観光業界、そして伊東市の様々な魅力を感じることができています。

その伊東市の魅力が何なのか言語にするのは難しいのですが、それは、伊東の魅力は二つ以上の要素が絡まって、特別な魅力になっているのではと感じています。

洗練されて質の高い高級レストランがあるかと思うと、市民に愛される地魚を出す魅力的な大衆居酒屋があり、自家焙煎の洒落たカフェがありつつ、昭和の雰囲気を残す喫茶店もある。
食だけでなくて、海の魅力のすぐ横に山の魅力があり、代々、生まれも育ちも伊東の人たちと一緒に都会からの移住した人々が普通に生活している。
この二面性が、より深く絡まり、さらに多面性として伊東の魅力を形づくっているのでは、と感じることが多いです。

地産地消の食材を提供するミクニ伊豆高原
桜木町通りの商店街

バブル時代の二面性

わたし自身は沼津出身で、伊東に親類がいたことから、まったく無縁という訳ではありませんでした。
地図でみると、伊東と沼津は同じ伊豆半島の東と西で、距離的には離れていませんし、同じ静岡県なので、同じ仲間というか、意識の距離感が近いかと思うとそうではなく、沼津から見ると伊東はまったく別の文化を持った町という印象が今でも強いです。

わたしの高校生時代はちょうどバブル景気へ突入していく少し前の1983年から1986年になります。この頃はまだプラザ合意以前の1ドル230円する時代で、海外の華やかな文化は東京経由で日本に輸入され、そこから何年も経て、ようやく地方都市へ伝播していく時代でした。

その頃はもちろんインターネットはありませんので、東京から発進される文化は様々な雑誌と、FMのラジオや東京のキー局のテレビが伝えていました。
沼津は静岡のローカル局しか受信できませんでしたので、どうしても欲しい情報がすぐに手に入りませんでした。
雑誌は手に入るのですが、そこに掲載されている情報を実際に体感するにはFMラジオやキー局の放送が必要でしたが、
伊東は、なんと東京のFMラジオが受信出来て、東京のキー局の放送がそのまま見ることができたのです。
しかも、伊東は、東京から踊り子号や、海岸線の国道135号線で、東京の文化をダイレクトに受け取ることができるイカしてる場所だったのです。
同じ静岡県でも伊東は東京の文化を感じるところでもありました。

そしてバブル景気の時代になると若者文化のトレンドを作り出していたホイチョイプロデクションの「彼女が水着にきがえたら」の影響もあり、東京の若者たちがこぞって伊東(というか伊豆高原に)を訪れる様になりました。
目的はダイビング、テニス、そして下田の白浜かサーフィンへ行く道中です。
そういう若者たちが増えていくといくと、俄然、伊豆高原はおしゃれな雰囲気が高まり、高級別荘地「軽井沢」と比べられるようになりました。

そんな伊東はすでに東京の一部であり、駿河湾に面した沼津から見ると、この時の伊東(特に伊豆高原)は、おしゃれな人たちが集まり、優雅に遊ぶリゾート地で、近寄りがたい雰囲気の場所になっていました。

しかし同じ伊東の中にはまだまだ温泉文化が最盛期である伊東温泉もありました。

これは伊東の多面性の素地になっている部分ではないでしょうか。

2023年現在では、熱海の方が若者文化に敏感で、人気スポットが多い印象を受けますが、当時の熱海は企業の社員旅行などの団体旅行が多く、夜にはコンパニオンを招いた大宴会が繰り広げられる観光地でした。
大企業に勤めている友人が、企業での慰安旅行の際に招いたコンパニオンが中学の同級生だっという笑えない話もありました。

しかし、伊豆高原は伊豆半島の中でも抜きん出た高級感と洒落た雰囲気を持つ地域だったのです。

伊東の文化的二面性

どこでも聞く話ですが、地元の魅力は地元の人が理解できないようです。
伊東も同じく、伊東の魅力は地元の人はなかなか分からないと聞くことが多く、言われれば理解できるものの、決して自分たちではそれを良いと思うことは少ないようです。

マーケティング調査を完璧にした上で出店する星野リゾートの宿泊施設が2つもある伊東温泉には、なにか人を惹きつける魅力があるのでしょう。

昭和のはじめに大倉財閥がイギリスの名門ゴルフコースを日本でも作りたいという目的で選ばれたのが川奈であり、そこは当時の日本とは異なる雰囲気のある場所だったのでしょう。
西洋式のホテルがこの地に出来る少し前に、伊東の街中では、市中を流れる松川沿いに唐破風づくりの豪華な旅館が開業しました。
それが今の東海館です。

ほとんど同時期に、同じ宿泊施設でも日本の伝統的な旅館と、西洋式のホテルが開業することも、この伊東という土地の持つ二面性の表れだと思うのです。

川奈ホテルのサンパーラー
東海館の中庭を見下ろす廊下

海と山の二面性

世界ユネスコジオパークに指定してされている伊豆半島全体が面白い地形をしている地域ですが、とりわけ伊東はジオパークを代表する大室山を中心に、太鼓の地球の鼓動が伝わってくる様なダイナミックな地形が魅力です。

その中でも、山と海がとても近接しているのも伊東の二面性を感じるところではないでしょうか。

伊東の中でも最新のトレンドの人気スポット、小室山のCafe321の展望ブリッジは、かなり浮遊感を覚える山頂ならではのパノラマビューを体感できます。

そこから海に行けば、水平線を眺めることができる海岸にいくことができます。

よく比較される軽井沢も山梨の北杜市も栃木県の那須も有名な別荘地ですが、山しかありません。
伊東の伊豆高原は、山も海もある贅沢な二面性を持つ癒しの地なのです。

小室山のリフトで登った山頂にあるCafe321の展望ブリッジ
伊豆高原のイガイガ根ではダイナミックな海を感じることができます
モニターツアーでおこなった小室山ナイトウォークでは、山頂から房総半島の明かりが見えました。東京の方の空が輝いています

生活と自然の二面性

普通のことなのかもしれませんが、伊東は生活のすぐ横に自然があります。
自然の中に暮らしがあるのかも知れませんが、何百年も続いて来た生活が今もそこにあり、そしてそのすぐ横には自然があります。

様々な生活をする上での工夫や文化がそこにあり、そこに恩恵を与えてくれると共に、時には壊滅的な災いももたらす大自然があるのです。

前述した様に、伊東は同じ静岡県というよりも、東京の文化圏の一番海と自然に近い町なのです。
東京から見たら、こんなに豊かな生活をしていることが、東京の文化圏の中での二面性なのかもしれません。

二面性の魅力

伊東のブランドとはなにかを市民で研究し、それを観光の施策に反映させるために立ち上がったブランド研究会ですが、ブランドについて考えるほど、ブランドは尖ることにより、他よりも抜きに出る存在感のことを指すだけではない様に思えます。
人は尖っているものには興味は持つかも知れませんが、その役目を終えれば不要となってしまいますし、反対に側に置いておくと危険な時もあります。

それよりも生きるために試して来た様々な文化が時層のように積み重なり、その時によって見せる様々な表情とその魅力が人を惹きつける様にも思えます。

伊東の3つの地域(宇佐美・伊東市街地・伊豆高原)のそれぞれの特性は二面性、多面性の魅力を伝えるものですし、実際はそれ以上に細かく分かれていて、多様な魅力が積み重なっています。

地元で生まれ育った人と、伊東の魅力を感じて移り住んで来た人が同じ様に一緒に働くことができるのも多面性の魅力になっているかもしれません。

東京の文化圏であることは伊東の最大のポテンシャルです。
その魅力を最大限に発揮するには、尖った部分を無理やり作るような施策ではなく、今の多面的な魅力を発進し、多様性な人たちを受け入れるオープンな気持ちを持つことだと思います。
オープンマインドを持つことが、伊東の魅力をストレートに発進し、相手に受け取ってもらえ、さらにコミュニケーションを自然に取れることが次の世代につながる無形の資産を作っていくことになると思います。

そんな状態に少しでも近づける様なお手伝いが出来ることに感謝です。

書いた人:株式会社カラーコード ・京都芸術大学 准教授 浅井由剛

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